ASCE(アメリカ土木学会) カール・エミル・ヒルガード水理学賞

 アメリカ土木学会(ASCE)のカール・エミル・ヒルガード水理学賞は、ASCEの論文誌Journal of Hydraulic Engineeringに前年度掲載された論文のうちの最優秀論文1編に与えられるもので、1939年に本賞が制定以来、これまで表-1に示すようにA. A. Kalinseke, V. A. Vanoni, E.M. Laursen, G. Orlob, N. H. Brooks, D. R. F. Harleman, J. F. Kennedy, D. B. Simons, E. Naudasher, W. Rodi等世界の指導的立場にある著名な水理学研究者が受賞している栄誉ある賞である。この賞は、水理学分野で国際的には最も評価されている論文賞の1つと言われている ( The Karl Emil Hilgard Prize is well established and prestigious in hydraulic engineering, Journl of Hydraulic Engineering, ASCE, Feb. 2001 pp.91-92)。なお、国際水理学会(IAHR)にはIppen賞があり、ASCEにはRouse Hydraulic Lecture賞がある。これらはA. T. IppenとH. Rouseの功績を記念して制定されたものであるが、この2人も、それぞれ1953年と1951・1961年に、このカール・エミル・ヒルガード水理学賞を受賞している。
 日本人としては、過去に1組(1984年)、海外との共同研究でもう1組(1987年)が受賞している。




ASCEの論文誌について
 ASCEの論文誌は、120年以上の歴史を有し、水工・水理学の分野では国際的に最も多く読まれ、引用されている論文誌である。1873年に「Proceedings of ASCE, Journal of Hydraulic Division」となった。1983年から誌名が「Proceedings of ASCE, Journal of Hydraulic Engineering」となり、現在に至っている。
 大津教授、安田助教授らの受賞論文はVol.125, No.5 (1999年5月)に掲載されている「Submerged Hydraulic Jumps below Abrupt Expansions (急拡水路の潜り跳水)」である。


カール・エミル・ヒルガード氏について
 1939年ASCEへカール・エミル・ヒルガード氏の提供した基金によってカール・エミル・ヒルガード水理学賞が制定された。カール・エミル・ヒルガード氏は1858年スイスのチューリッヒに生まれ、1979年ETH(スイス連邦工科大学)卒業、1883年アメリカに渡りNPR (Northern Pacific Railroad Company)のHead Engineerとなり、その後、Principal Consulting EngineerとしてWater-supply plant等の設計に従事した。1899年にスイスに戻り、ETH(スイス連邦工科大学)の水工学・地盤工学の教授となった。1912年以降は、スイスをはじめとするアルプス地域のダムと水力発電建設の設計指針を与え、当時のGolden Years of Hydraulic Engineerの基を築いた。

参考文献
W. H. Hagaer: "Karl Emil Hilgard: Swiss Hydraulician and Sponsor of ASCE Paper Award", Journal of Hydraulic Engineering, Vol.126, No.2 pp.91-93, 2001